マオ 

06.10.20

読書とは縁遠い私でありましたが、この夏より急に読書づく。
現代中国に関する本を3冊読んだが、どうしてもその根っこたる
毛沢東を知らなければならなくなった。
ユン・チヤン著の「マオ」 上下巻1000ページを超える大書だ。
おじけづく。

しかしその内容は驚愕なものだった。これほど虚と実の違う人物は
世界史上でもいないだろう。世界中がだまされていたのだ。
まさに「誰も知らなかった毛沢東」「建国の英雄か恐怖の独裁者か。」
多くは今日でも伏せられたものであり、こんな事が本当なのだろうか。
本に書いても大丈夫なのだろうか。と思われる事ばかりだ。

遥か昔のお話しではない。我々がウルトラマンに熱中し、大阪万博
で行列し、ギターで吉田拓郎を弾いて声を張り上げていた頃、すぐ隣
の国では文化大革命の粛清の嵐が吹き荒れ、数千万人が迫害され、
少なくとも300万人が殺されていたのだ。
ただただ軍事超大国になることのみを夢見て、自国民の生活など
まったく考えず、無計画な暴挙といえる大躍進政策で、1958-1961の
わずか4年の間に3,800万人もの人民を死に追いやった。
その頃の日本は「三丁目の夕日」の時代。貧しくても明日に希望が
持てた時代だった。
1920年代から1976年に死亡するまでに実に7,000万人以上の
自国民が殺されていたのだ。

太平洋戦争で日本人の戦没者が310万人。ヒトラーがユダヤ人を
虐殺したのが600万人。スターリンが自国民を粛清したのが2,000万人。
それと比較していかに狂気の国家だったか。
生まれてくる場所と時代を間違うと本当にとんでもない運命になるのだ。

金正日の北朝鮮と毛沢東の中華人民共和国はとても似ている。
核戦争のカードをちらつかせ、米ソ超大国を揺さぶりいろんなお土産
を引き出すやり方。原爆を作る為。ミサイルを飛ばす為に数千万人
を餓死させても平気な事。軍事費に国家予算の60%以上もかける事。
48億個も毛沢東バッジをくばり、肖像画を12億枚も作り、毛沢東語録
という小さな赤い本を国民全員に配り、なにかあると高々掲げさせる事。
そのでたらめ度、残虐度のスケールは比べ物にならないがとても良く
似ている。

エピローグの文
「今日なお、毛沢東の肖像と遺体は北京の中心部にあり、天安門広場
を威圧している。現共産党政権は自らを毛沢東の後継者と位置付け、
全力で毛沢東神話の不朽化をめざしている。」
女流作家 ユン・チアンの勇気と執念に敬服する。